2020年10月17日
最終更新:2022年10月22日

今から始める人のための「World of Warcraft」の歴史

8番目の新拡張「Shadowlands」の2020年末リリース以降、新規のプレイヤーはその1つ前の拡張「Battle for Azeroth(以下BFA)」でレベル上げをする事が基本となっています(詳しくはこちら)。ですが予備知識もなしにそこから始めるとストーリーの流れがさっぱりわからないので、直近の出来事に重点を置いた内容で「World of Warcraft」の歴史を紹介します。

2022年末リリースの「Dragonflight」は、BFAでレベルを上げれば「Shadowlands」を飛ばしてプレイできるのですが、直接的な話の繋がりはそれほど強くはないはずですが、やはりわかりにくい部分は出てくるはずなので、「Shadowlands」のストーリーもあわせて紹介しています。

3番目の拡張「Cataclysm」まで

物語の舞台となるのは、Outland<アウトランド>における争乱(拡張1「Burning Crusade」:2007年)・北の大陸でのLich King<リッチキング>との最終決戦(拡張2「Wrath of the Lich King」:2008年)・暴竜Deathwing<デスウイング>との死闘(拡張3「Cataclysm」:2010年)など、御難続きの惑星Azeroth<アゼロス>です。異世界や別の惑星も時々出てきます。

そこではHuman<ヒューマン>などの種族からなるAlliance<アライアンス>と、Orc<オーク>などからなるHorde<ホード>の2大陣営が長く対立しています。Azerothを狙う悪魔族を中心とするBurning Legion<バーニングリージョン>と呼ばれる異世界からの侵略者の策謀によるものだったとはいえ、元々はHordeの中心種族であるOrcのAzeroth侵攻(WoWの物語開始より前の1次〜2次大戦)から始まった関係なので無理からぬ事ではあるのですが、一方で全世界を揺るがす脅威に何度もさらされ、そのたび共闘を余儀なくされてきました。

4番目の拡張「Mists of Pandaria」:2012年

彼らの関係を再び悪化させる要因となった一つは、Hordeの父とも言えるOrcのThrall<スロール>の後を継いでHordeのリーダー(Warchief<ウォーチーフ>)となったGarrosh<ガロッシュ>の暴走。Hordeの首都がある西の大陸Kalimdor<カリムドー>の玄関口の一つであり、Allianceの強力な女魔法使いであるJaina Proudmoore<ジェイナ・プラウドムーア>が治めるTheramore<セラモア>の地を強力な新型爆弾で廃墟にし、さらに強大な力を手中にすべく新大陸Pandaria<パンダリア>で見つけた邪悪な力を我が身に取り込もうとしたため、最後にはHordeの仲間内からも見放されて自滅。(日本語訳付ムービー)

5番目の拡張「Warlords of Draenor」:2014年

しかし、その後彼は異世界Draenor<ドラノア>(Orcの故郷)の過去の時空へと逃亡し、軍勢を組織して再び戦乱を引き起こします。それもまた両陣営の共闘によりなんとか鎮圧に成功しますが、これがBurning Legionの一大侵攻の呼び水となってしまいます。(日本語訳付ムービー)

6番目の拡張「Legion」:2016年

これを食い止めるべく、Legion侵攻の入口となっている島へと連合軍が向かいますが、想像以上に敵は強力で両軍は大打撃を受け、AllianceのリーダーであるHumanのStormwind王国<ストームウインド>のVarian王<ヴァリアン>が戦死。この際Horde軍が先に撤退を始め、Alliance軍が完全に孤立した状態となっていたため、Hordeにはめられたと彼らに対するAllianceの不信感がさらに増大(もっともHorde側でも新WarchiefのVol'jin<ヴォルジン>(Troll<トロール>種族)が瀕死の重傷を負うなど撤退やむなしな状況だったのは事実)。(ムービー:YouTube)

Sylvanas Windrunnerの台頭

そしてLegion序盤の戦いでのVol'jinの死後、HordeのWarchiefとなったのは種族Forsaken<フォーセイクン>(死から蘇ったUndead達)を束ねる元High Elf<ハイエルフ>のSylvanas Windrunner<シルバナス・ウインドランナー>。

彼女はGarrosh同様にトラブルメーカーで、かつてLich Kingによって国を滅ぼされ、同胞を殺され、自らはUndeadへと変えられ、その後復讐の生を生きてきた気の毒な人ではあるのですが、Lich Kingが討伐された後、命あるものはいずれ死を迎え、その恐怖が争いを生む。ならばすべての生き物がUndeadとなれば大切なものを失う恐怖から逃れられ、平穏な世界が訪れるといった考えに至ったようです。このため、敵味方見境なく毒ガス攻撃を行い、死んだ兵士をUndeadとして蘇らせるような真似すら平気でやります。
(実際はこの辺りの心情は当人の口からはまだ何も語られておらず、後の拡張の中で明らかになるはず:赤字注意書き以降参照)

7番目の拡張「Battle for Azeroth(BFA)」:2018年

これに対し、名誉を重んじるOrcの老戦士・Saurfang<ソーファング>や、Tauren<トーレン(牛さん)>で穏健派のBaine<ベイン>など、Horde各種族のリーダークラスの間でもSylvanasに対する不信が高まり続けています。

さらに両陣営の関係を不安定にしたのは、強力なパワーを秘めたAzerite<アゼライト>という新鉱物の発見とその利権争い。Varian王の後を継いで即位したAnduin王<アンデュイン>は、Allianceのリーダーとして両陣営の軋轢緩和を模索していましたが、SylvanasはAlliance側種族の一つNight Elf<ナイトエルフ>の故郷であるTeldrassil(テルドラシル)を突如急襲(BFA開始直前のプレイベント)。多くの住人を惨殺し、彼らのシンボルであった巨大な聖なる樹・World Tree<ワールドツリー>を焼き払う暴挙に出ます。(ムービー: YouTube)

四次大戦の勃発〜同盟国を求める航海

これを引き金として両陣営の間でついに大戦争が勃発(四次大戦)。Anduin王はForsakenの本拠地であるUndercity<アンダーシティ>(かつて存在したHumanの王国の一つLordaeron<ローデロン>の首都であった地)の攻城戦を敢行し、あわよくばSylvanasを殺すか捕まえるかする事で戦争の早期終結を図りますが、Undercityは陥落させたもののSylvanasには逃げられてしまいます。(日本語訳付ムービー)

これにより戦争が長期化する見通しとなったため、両陣営はそれぞれ戦力補強のため、海の彼方の新勢力を味方に引き入れようと画策します。それがBFAの舞台となるAlliance側のKul Tiras<クルティラス> (Jainaの故郷である海洋国家)であり、Horde側のZandalar<ザンダラー>(Hordeに属するTrollとは別のTroll部族の帝国)である訳です。

BFAのその他重要ポイント

BFAでのJainaは対Horde強硬派ですが、かつては種族間の協調を夢見る穏健派の代表格であり、それゆえに前の大戦でOrcを野蛮なだけの種族と決めつける海軍提督の父と対立し、彼を死なせてしまった悲しい過去を持ちます。
ですからOrcのGarroshによって自分の領地であるTheramoreを破壊され、大切な仲間や民を皆殺しにされた怒りと悲しみは計り知れないものだったでしょう。それにも関わらず、父を殺し、Theramoreを守れず多くの同胞を死なせたと、故郷の人達からは裏切り者・父殺しの罪人として白眼視されています。

Orcの老戦士・Saurfangは、Undercity(Lordaeron)攻略戦の終盤で死に場所を求めるように単騎Alliance軍の前に立ちはだかりますが、ついに力尽きAnduin王に名誉ある死を請います。しかし王は名誉を知る者として彼の命を惜しみ、捕虜としてStormwindの牢へと幽閉するに留めます(BFA冒頭で体験できるはずのUndercity(Lordaeron)攻略イベントは、少なくとも新規プレイヤーが今回BFAをプレイする場合には省略されています)。

Azeriteという鉱物は、「Legion」のクライマックスでBurning Legionの親玉であるSargeras<サーゲラス>の封印に成功するのですが、最後の悪あがきに彼がAzerothの大地に途方もなく巨大な剣を突き刺した事でAzerothが流した"血"の結晶である事が判明。このため、傷ついたAzerothを癒やすために必要なキーアイテムともなっています。この辺りの話で出てくる水晶のような外見のおじさんは、Alliance陣営Dwarf<ドワーフ>のMagni王<マグニ>です。

本来Hordeサイドでは、Stormwindで囚われの身となっているZandalari帝国のTalanji王女<タランジ>を救出するというイベントがあり(同じくその牢獄にいるSaurfangにはSylvanasのHordeには戻らんと断られる)、そこから海上バトルのムービーへと繋がるのですが、このイベントが省略されているため冒頭部がやや言葉足らずになっています(人名・用語集「Talanji」参照)。



以上を押さえておけば、さしあたってBFAでストーリーがさっぱりわからんという事態は避けられるはず。ただし先へ進めていくに従って、ここでは省略したもっと基本の情報も理解に必要になるので、以下もあわせてお読みください。
5分でわかるWorld of Warcraft (WoW)の歴史(過去の話中心)
World of Warcraft(WoW)の人名・用語集(5分で〜の補完的内容)


【注意!!】この先はBFA終盤以降の露骨なネタバレなので、まだ読みたくない人は読まないように。

四次大戦の終結

両軍の消耗戦が続く中、Anduin王の手引きで牢から脱走したSaurfangは、Thrallらと共についにSylvanasに対する反乱を起こし、反乱軍とAllianceとの連合軍が首都Orgrimmar<オグリマー>を囲みます。SaurfangはHordeの同胞達と戦うよりSylvanasとの一騎打ちを望みます。戦闘はSylvanas優勢に進みますが、不屈の闘志を見せるSaurfangに苛立ち、自分にとってHordeなどどうでもいい存在だとつい本音を漏らしてしまい、彼女は兵士達を見捨てて一人戦場から飛び去ります。Saurfangは命を落としますが、Hordeはリーダーを失いようやく戦争は終結(日本語訳付ムービー)

その後Nagaの女王Azshara<アズジャラ>を利用してOld GodsのN'zoth<ヌゾス>が復活しますが、Magni王やWrathion(<ラシオン>Old Godsによって正気を失った3番目の拡張のラスボスDeathwingの子)らの助力の元にこれを撃退。

8番目の拡張「Shadowlands(SL)」:2020年

行方をくらまし両陣営から追われる身となったSylvanasは、一人北の大陸Northrendに現れ、Arthas(<アーサス>闇落ちしてLich Kingと融合したかつてのLordaeron王国の王子:2番目の拡張のラスボス)亡き後不死の怪物共を統べる新Lich King(Bolvar<ボルヴァー>)を戦いの末に下してその兜を真っ二つに砕き、これによって死者の世界へと繋がる扉が開かれてしまいます(日本語訳付ムービー)。一方Anduin/Jaina/Thrall/Baineといった両陣営のリーダー達が何者かに連れ去られてしまいます。
彼らを救出すべく、冒険者達は死者の世界であるShadowlandsへ。そこはEternal Ones(<エターナルワンズ>永遠の者達)と呼ばれる4人の強大なリーダー達がそれぞれ4つの領域を支配する世界でしたが、生者の世界同様に大きな混乱が生じていました。

Jailerとの死闘

一連の混乱を裏から操っていたのは、かつてShadowlandsのリーダーの一人であり、罪を咎められ今は地獄界Maw<モー>に幽閉されているJailer(<ジェイラー>看守の意)でした。彼はSylvanasに早くから接近し、自分ならばこの苦しみに満ちた世界を変革できると協力を求めていました。
そして彼女の協力の元、世界のすべての死した者が裁きを受ける事なくMawへと直接墜とされるよう謀略を仕掛け、死者の世界を支えるパワーの源であるAnima<アニマ>を独占し、これによって完全な自由を得ます。

彼の目的は、全宇宙を創造したFirst Ones(<ファーストワンズ>始まりの者達)が定めた宇宙の理自体を書き換える事。この宇宙は光と闇・秩序と混沌といった相反する力が対立・均衡する事で成り立っており、この事が争いを生み時には悲劇を起こします。この根本原理を書き換えて、自分がすべての力を統べる唯一絶対の支配者・裁定者になろうとしているのです。このためにZereth Mortis<ゼレス・モーティス>と呼ばれるFirst Onesが宇宙創造のために作った工房を手に入れようとしていましたが、彼に対する不信感を募らせたSylvanasが反旗を翻し、Shadowlandsの有力者達の協力を得て、冒険者達はついにJailerを打ち倒します。

つかの間の平穏そして「Dragonflight」へ

SylvanasはArthas:Lich Kingの魔剣Frostmourneによって砕かれた魂のかけらを取り戻し、生前の高潔な人格が戻って罪の意識に苛まれながら、裁きを受ける事なくMawに墜とされたすべての魂を裁定者の元に送り届けるという、いつ終わるとも知れぬ贖罪の業を続けています(Hordeはその後強大な権限を持つWarchiefを置かず、種族リーダー達による集団指導体制へと移行)。

呪いによってJailerの操り人形と化していたAnduin王は、最後の力を振り絞ってその呪いを打ち破りますが、自分が行った悪行に対する罪悪感からAzerothに戻れず、一人Shadowlandsを放浪しています(Allianceは二次大戦の英雄Turalyon<テュラリオン>が軍司令の肩書きで王の職務を代行中)。

とはいえ大戦は終結し、Shadowlandsの混乱も終息し、Azerothはつかの間の平穏を得ました。しかしその頃、長い間眠りについていたドラゴン種の故郷の島が目を覚まし、ドラゴン達を統べるDragon Aspects(<ドラゴンアスペクツ>偉大なる竜種達)の招きに応じ、冒険者達は休む間もなく(*)新たな冒険へ...。

(*)設定上は「Shadowlands」の争乱が終結した後「Dragonflight」が始まるまでに、3年程のほぼ平穏な時期があった事になっているそうです。

[おまけ]さらに先の未来

冒険者達によって打ち倒されたJailerは、最後にこのようなつぶやきを残しました。「宇宙が分断されていては来たるべきもの(what is to come)を乗り切ることはできぬ」と。これはいつか将来、Jailerすら恐れるほどの脅威がAzerothどころか全宇宙を脅かすという事でしょうか?
正直Jailer自身は傲慢で自己中、無慈悲な存在のように感じられ、彼の行いを肯定する気にはなれませんが、その目的は必ずしも自分本位なだけでなく、彼の中では世界のために必要な"正義"だったのかもしれません。

2022年の「Dragonflight」は、その"来たるべきもの"とは直接関係しないストーリーになると思いますが、さらに2年後に出るはずの新しい拡張で、その正体が描かれる事になるかもしれません。その拡張はちょうど10本目の節目にあたり、発売はWarcraftシリーズ30周年/WoW20周年の年になるはずで、それだけに充実した内容のものになる事を期待したい所。個人的には各プレイヤーが自分の家を持てるハウジング(※)が実装されるのではないかと期待しています。
※中の人はインタビュー(英文)で、開発チームの中でよく話題になるし、実現したいという夢は持っているが、やるならば時間のかかる大仕事だという主旨の発言をしている。

「Dragonflight」をプレイする場合、「人名・用語集」を"dragon"のキーワードで検索してドラゴン種族の登場人物をピックアップして読んでおけば、より物語を理解しやすくなると思います。


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